カシスオレンジ


カシオレみたいな恋をしよう。

甘くて苦くて酸っぱい恋。

俺がオレンジジュースなら、あのひとは、カシスのお酒。

甘くて酸っぱいのが俺なら、あのひとは苦い。

二人が混じるとカクテルになる。

大人の魅力でいろいろ教えてもらった。

でも、やっぱり俺は、あの人のずっとにはなれなかった。

俺とあの人は、同じだから。

同じだから、一緒にいることを許されない。

初めからずっとわかっていた。

俺は遊ばれてるだけなんだって。

「いやっ……離れたくない……」

俺はなりふり構わず、すがりつく。

「わかるよね?」

「わかんないよ……」

「君は、オレンジジュースみたいに甘くて酸っぱい」

「いやだ!」

「君とやっていけない。君とは一緒にいられない。ずっと一緒にいることはカクテルみたいに甘くない。苦い苦い現実と結婚する。さよなら」

あの人と快感に喘ぐことは、気持ちよすぎた。現実なんてどうでもいいくらい。ずっと続いてほしいと思ってた。

「振られちゃった」

涙を流しながら、顔を上げた。

隣の住人だった。

「別れ話は、アパートの玄関でするものじゃないよ?」

「……ごめんなさい」

「話、聞いてあげるから、こっちにおいで」

新しい恋の予感がした。

俺はその人に寂しさのあまり抱きついてしまった。

その人は、甘いカシスジュースだった。

「オレンジジュースと、カシスジュースでお子ちゃまの飲み物だね。俺たちの恋みたい」

甘々の恋人に話しかける。

「子供の恋っていうの?」

「そうは言ってないよ。甘くて美味しい。俺にぴったり」

恋人の肩に頭を乗せて俺は幸せな気分になる。

「まったく」

恋人は、優しく笑った。アパートの隣の部屋で、多い時間一緒にいれる。幸せで、ずっといっしょにいたいと思えた。

「カシスオレンジみたいな恋より、自分に合った恋のほうがいいね」

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