カルーアミルク


カルーアミルクみたいな恋をしてた。

恋人の肌はカルーアのお酒みたいに茶色かった。

逆に僕は焼けにくい体質らしくて、真っ白な肌の色をしていた。

恋人が、白くてさわり心地のいい肌だね、ってカタコトの日本語で誉めてくれるのがたまらなく嬉しかった。

抱き合っている時の茶色い肌と白い肌のコントラストもたまらなく好きだった。

僕は彼を好きすぎて、病気みたいにおかしかったと思う。

そんな僕を彼は、全部受け入れてくれた、と思ってた。

そう思ってたのは僕だけだったみたい。

「乳臭いガキの相手はしてられマセン。正直疲れマス」

偶然だった。薄暗いけど上品なバーでそう話してるのを聞いてしまった。二人が出会った場所だった。

ショックだった。ただ、ショックだった。

僕は、大好きだった恋人の顔を見ることができなくなっていった。

あの乳臭いという言葉が、僕の中で消化できない。

確かに、ミルクみたいにあまちゃんだな、と思う。

あの言葉の真偽を確かめることもできない。

前のように甘えることができなくなっていった。

それからどんどん疎遠になり、自然に消滅してしまった。

バーテンダーに無理を言ってカルーアを少し多めに入れた苦めのカルーアミルクを飲みながら、僕は彼のことを思い出す。

「ここ、いいですか?」

バーで出会ったひとりの年下の男。

彼は、コーヒーみたいな中毒性があった。

「コーヒー牛乳みたいだ」

「風呂上がりに飲みたくなりますよね」

そういうところが好きだ。

でも、昔みたいに、強烈に熱くて怖いくらいに盲目の病気みたいじゃない。

優しく穏やかに愛してる。

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